愛と努力

 

上手くいかない婚活や恋愛に嘆いていたら、顔見知りの女性が私を誘い出してくれた。

二人っきりで会うのは初めて。年齢が近くて、会話に使う言葉をしっかり選んで話してくれる魅了的な女性。誘ってもらったのが純粋に純粋に嬉しかった。

 その女性は、婚活や恋愛に疲れている私を励ましてくれようと考えていたらしい。

 

彼女は最近恋人ができたばかりで、その恋人を振り向かせるために、自制し、感情的になり過ぎず、「男性をゲットする」ということに集中した結果、見た目ぴかぴかに好みの男性とお付き合いをすることになったということを初めて教えてもらった。彼女の恋人の有無や結婚願望も知らなくて、この夜全部初めて聞いた。

彼女から聞けば聞くほど、結婚がしたい!という大きな気持ちで初めてした形の努力は素晴らしくて、本当に恋愛の成果が出たばかりの彼女は嬉しそうで可愛かった。

そのまま、彼女は最近自分が慎重に身に付けた努力を私にもしっかりと伝授しよう、と

今の私に必要と思われるテクニックについてたくさんたくさん話をしてくれた。今日はそのつもりで誘ってきてくれた様子だった。

 

でも、なんだかこの辺りで私は辛くなってきてしまった。

何かが、お互い噛み合ってなかった。

彼女は自分に自信を持つことで恋愛に対するモチベーションをコントロールし、恋に溺れることなく相手の気持ちをこちらへ持ってくることができた。そして、見た目から恋して相手も内情が非常に優しい男性であった。話を聞けば聞くほど、これはすごく良い恋愛だな、と関心した。素直に「よかったね」とやさしい気持ちになれた。

 

彼女は私に、私の理想を聞いてくれた。

私はなんか、上手く理想が言えなかった。

言葉が止まり、抽象的な事ばかり答えていると、最終的に彼女が理想の芸能人を聞いてくれたので「井浦新」と答えた。なぜか泣きそうになってた。

これは、「具体的な目標を定める事で興味が持てない男性との無駄なやりとりを無くす」という目的がある非常に意義のある質問だと説明された。

彼女は優しくて、彼女自身も何か今日のことが想像と違うと感じてたらしく、でもすごく丁寧にいろいろと聞いてくれた。私には「自信を持って」「でも無理維持はしないし、そんなつもりでいってると思わないで」と何度が話してくれた。

でも私は泣きそうで、最後は一緒に、私がなぜ泣きそうなのかを考えてくれた。

私はきっと、こんなに婚活が上手くいっていない自分が「高い目標」を持っていることが恥ずかしかったんだ。「高望みしているから、結婚ができないんだ」と思われるのが嫌だったから、それが恥ずかしくて上手く話ができなかった。

 

 

きっと私は今「結婚」したい、という気持ちを手放したい。

それができたら、独り身であることを悲観しひどく落ち込むことも、別の過ごし方ができるのではと考えている。結婚できていないことは大きなコンプレックスだ。

 

そもそも恋愛が上手くいかない。

恋愛せず恋みたいな不安定な行為に心を崩すことなく、一緒になれる恋人が欲しい。

いろんな人が「まだ若い」「大丈夫だよ」と声をかけてくれても、今の私は結婚したことないし、どれだけ私が望んでもそこまで話を一緒に進めてくれる人は現れなかった。

お金を払い、よく見て欲しいと着飾った写真を準備して「よしっ」と意気込んだ私と出会ってくれる男性はみつからなった。お金を使っても結婚できなかった人間。

一緒に新しいお家を作ろうとしてくれる人が現れなかった人生が今の私の全部なんだ。

異性と一緒に過ごすことの大きな安心感を知らないわけではないから、諦めきれない。そして私は「甘える」ということが恋人にしかできない。

甘えなくても私は死なないが、それをしていい相手がいる生活や世の中は、今よりいきやすい。

 

 少し前に結婚した先輩に「どんな人が好き?」と聞かれ、「声が低い人」と答えるとニヤッとして「まだ恋愛する気でいるな?」と言われた。

その言葉はこないだの彼女との会話と真逆にある。

ずっしりと響き、 お腹に落ちた。

ショックではあったけど、納得もした。

好みではく、自分の居心地がいい人を選ぶべし。見つけるべし。そんな局面で「井浦新」が良いなんて口に出したら鼻で笑われる。誰に。

そして、その居心地の良い人は見つからないし、失恋したばかりの身体ではより一層のこと、意味がわからない。

 

帰りに彼女から恋人と二人でいる時間の楽しいことをたくさん話してもらい、それを話す嬉しそうな彼女が本当に可愛くてその空気でお別れができた楽しい夜だった。

 

彼女の年齢を初めて聞いたんだけど、私よりは若く、何かの違いに答えきれず「どうしてもちょっとおばちゃん目線で聞いてしまう」と言ってしまったあとに「こんなことになるなら年齢なんか言わなきゃよかったな」と言われてしまって、年齢に逃げた自分が恥ずかしかった。