召し上がれ
この部屋はあんまり暑くもなく、寒くもない。
夏もあんなに毎日耳元で煩かった虫にも困らなかったし、
秋の鳴き声もまだ聞いていない。
このままでも楽しいけと、このままだと地べたについている部分から傷んで色が変わってしまうような気持ちになって慌ただしくいろんな人とご飯を食べ、お話をして、お酒を飲んだ。
ぼんやりしたまま目を合わせてみた人とは、なんかそのままぼんやりと会わなくなる。
またぐるぐると初めましてを繰り返しているうちに、来年の予定が入ってくる時期になってしまった。
繰り返したいわけじゃないのに。
ここぞと、すっと、向き合いたいのに。誰かあなたと。
でもあなたは誰なんだろうね。
好きなひとも好きだったひとになってここにはやってこない。
ずっとこのままこの部屋で暑くも寒くもないまま繰り返して腐っていくのかな。はみ出した床についたお尻の部分から。
そんなことで自分の墓穴を掘りかけてしまったら、またはスコップを手にする前に「明日晩ごはん一緒に食べようよ?」と友だちに連絡する。
そして、今夜くるひとの苦手なものを思い出しながらトントンカンカンご飯をつくる。
自分のために、自分が誰かとご飯を食べるためにちょっと気にしたご飯を作る。
その行動でだいぶと健やかに生活が作られている気がする。
聞いてもらって、聞いて、語って、調べて、探して、話をする。
夢はどこかに行ってしまった気がするけど、
生活がどんどん強くなってきた自分は好きだ。
このまま、この愛で転がって、いつかあなたと話がしたいです。
いつあなたがきても大丈夫なように、ご飯は炊いておきますね。